ひとり社長と顧問税理士、クラウド会計でも帳簿も関係も自動じゃない

「クラウド会計を導入したら、もう税理士いらないかも?」

そんなふうに思ってしまったひとり社長の方へ、ちょっとだけ立ち止まっていただきたいお話です。

会計の自動化が進んでいるのは間違いありません。
けれども、「帳簿が自動でできあがる」わけでも、「数字が自動で経営を導いてくれる」わけでもないのです。
そして何より、税理士との関係性まで自動化される時代は、まだ来ていません。

1. 帳簿は「自動化」されているようで、全然されていない

マネーフォワードなどのクラウド会計を導入すると、
銀行やクレジットカード、電子マネーと連携して、取引明細が勝手に取り込まれます。
一見すると「帳簿が自動でできる!」と思いたくなる仕組みです。

ですが、ここに落とし穴があります。

連携されるのは、あくまで「取引の生データ」。
たとえば、こんな明細が取り込まれます。

  • 4/3 三菱UFJ銀行 -33,000円

  • 4/5 Amazon.co.jp +15,800円

  • 4/7 セブン銀行ATM -20,000円

もちろん、マネーフォワード側で勘定科目の自動推測はされます。
たとえば「これは通信費っぽい」「これは消耗品だろう」といった判断ですね。

さらに、同じような取引が繰り返される場合は、自動仕訳ルールを設定することで、登録ボタンを押すだけで処理できるようにもなります。

ただし、それはあくまで「見た目が似ている」だけのルール適用です。
取引の内容まで理解したうえで判断しないと、まったく違う処理が必要になることもあります。

この仕訳が「何に使った出費なのか」「経費か固定資産か」「単なる資金移動なのか」などを見極めるのは、やはり人間の判断です。

帳簿が自動で作れるというのは、
原材料が届いた状態で、料理が完成すると思っているようなもの。

レシピ(ルール)と料理人(判断)が揃わなければ、
「預金がマイナス」「売掛金の残高が整理されていない」なんて帳簿が出来上がってしまうのです。

2. 申告書だけ作ってもらえればいいと思っていた結果…

これは、実際に当事務所にご相談いただいた、あるひとり社長のケースです。

その方は、毎月マネーフォワードに入力をしており、
「自分でちゃんと帳簿つけてるし、あとは税理士が申告書作ってくれれば十分」と思っていました。

実際、税理士側も「数字は自分で入力しているならそれでいいですね」とだけ伝えて、
中身を確認せず、そのまま決算・申告へ。

ところが——
完成した申告書を見ても、「この数字って何を根拠にこうなってるんだろう?」と感じることがある。
でも、税理士からは「特に問題はないのでこのまま申告しますね」とだけ言われて終わってしまう。
ひとり社長としては、「いや、そうじゃなくて中身の説明が欲しいんだけど……」というモヤモヤが残る場面です。

マネーフォワードに入っている数字自体が、
適切な仕訳ルールに基づいて処理されていなければ、
どんなに帳簿が完成していても、意味のある申告にはなりません。

3. クラウド会計の価値は「数字の見える化」ではなく「判断の言語化」

クラウド会計の最大のメリットは、
「数字がリアルタイムで見える」ことではありません。

本当の価値は、
「その数字を、どう見るか、どう判断するか」を会話できる状態になること。

  • この支払いは外注費として処理できるのか? それとも給与扱いになるのか?

  • 源泉徴収の対象かどうか、取引の実態に沿って判断が必要です。

  • 借入金の返済は、元本部分は経費にならないため、スケジュールをどう組むかで利益や納税額、資金繰りに与える影響が変わります。無理のない返済計画と税務の整合性をとることが大切です。

こうした判断を誰かと一緒に言語化できるかどうかが、クラウド会計を“活かす”か“ただ入れただけ”で終わらせるかの分かれ道になります。

だからこそ、税理士は「数字の翻訳者」であり、
経営判断と税務判断の橋渡し役であるべきです。

4. 数字が“それっぽく見えているだけ”になっていませんか?

クラウド会計に数字を入れていても、
「これで合ってるのか自信がない」「税理士は申告だけやって終わり」
そんな声が当事務所にも多く寄せられます。

帳簿が整っていないと、相談したいと思っても、数字を元にした話がそもそもできません。
逆に、日々の処理に方針があり、会話が通じる環境であれば、
ひとり社長でも経営判断はグッとラクになります。

クラウド会計の本当の活かし方は、入力そのものより、
その後に誰と、どう数字を見るかにかかっています。

まとめ: 自動化の時代だからこそ、対話の価値が際立つ

帳簿も申告も、ツールで効率よく進められる時代になりつつあります。

でも、「帳簿がちゃんと整っているか」「その数字で意思決定できるか」という部分は、
今も昔も、人と人との対話にしか生まれません。

今の税理士とのやり取りにモヤモヤされている方、
クラウド会計を入れてみたけど思ったよりスッキリしない方。

税理士変更も一つの選択肢かもしれません。

当事務所では、クラウド会計を前提とした運用と、
数字の意味を一緒に考える関係性を大切にしています。

当事務所と顧問契約をご検討いただける方は、下記よりお問い合わせください。

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