〒170-0004 東京都豊島区北大塚1-19-12 コルティス大塚6F-01
そんなふうに思ってしまったひとり社長の方へ、ちょっとだけ立ち止まっていただきたいお話です。
会計の自動化が進んでいるのは間違いありません。
けれども、「帳簿が自動でできあがる」わけでも、「数字が自動で経営を導いてくれる」わけでもないのです。
そして何より、税理士との関係性まで自動化される時代は、まだ来ていません。
マネーフォワードなどのクラウド会計を導入すると、
銀行やクレジットカード、電子マネーと連携して、取引明細が勝手に取り込まれます。
一見すると「帳簿が自動でできる!」と思いたくなる仕組みです。
ですが、ここに落とし穴があります。
連携されるのは、あくまで「取引の生データ」。
たとえば、こんな明細が取り込まれます。
4/3 三菱UFJ銀行 -33,000円
4/5 Amazon.co.jp +15,800円
4/7 セブン銀行ATM -20,000円
もちろん、マネーフォワード側で勘定科目の自動推測はされます。
たとえば「これは通信費っぽい」「これは消耗品だろう」といった判断ですね。
さらに、同じような取引が繰り返される場合は、自動仕訳ルールを設定することで、登録ボタンを押すだけで処理できるようにもなります。
ただし、それはあくまで「見た目が似ている」だけのルール適用です。
取引の内容まで理解したうえで判断しないと、まったく違う処理が必要になることもあります。
この仕訳が「何に使った出費なのか」「経費か固定資産か」「単なる資金移動なのか」などを見極めるのは、やはり人間の判断です。
帳簿が自動で作れるというのは、
原材料が届いた状態で、料理が完成すると思っているようなもの。
レシピ(ルール)と料理人(判断)が揃わなければ、
「預金がマイナス」「売掛金の残高が整理されていない」なんて帳簿が出来上がってしまうのです。
これは、実際に当事務所にご相談いただいた、あるひとり社長のケースです。
その方は、毎月マネーフォワードに入力をしており、
「自分でちゃんと帳簿つけてるし、あとは税理士が申告書作ってくれれば十分」と思っていました。
実際、税理士側も「数字は自分で入力しているならそれでいいですね」とだけ伝えて、
中身を確認せず、そのまま決算・申告へ。
ところが——
完成した申告書を見ても、「この数字って何を根拠にこうなってるんだろう?」と感じることがある。
でも、税理士からは「特に問題はないのでこのまま申告しますね」とだけ言われて終わってしまう。
ひとり社長としては、「いや、そうじゃなくて中身の説明が欲しいんだけど……」というモヤモヤが残る場面です。
マネーフォワードに入っている数字自体が、
適切な仕訳ルールに基づいて処理されていなければ、
どんなに帳簿が完成していても、意味のある申告にはなりません。
クラウド会計の最大のメリットは、
「数字がリアルタイムで見える」ことではありません。
本当の価値は、
「その数字を、どう見るか、どう判断するか」を会話できる状態になること。
この支払いは外注費として処理できるのか? それとも給与扱いになるのか?
源泉徴収の対象かどうか、取引の実態に沿って判断が必要です。
借入金の返済は、元本部分は経費にならないため、スケジュールをどう組むかで利益や納税額、資金繰りに与える影響が変わります。無理のない返済計画と税務の整合性をとることが大切です。
こうした判断を誰かと一緒に言語化できるかどうかが、クラウド会計を“活かす”か“ただ入れただけ”で終わらせるかの分かれ道になります。
だからこそ、税理士は「数字の翻訳者」であり、
経営判断と税務判断の橋渡し役であるべきです。
クラウド会計に数字を入れていても、
「これで合ってるのか自信がない」「税理士は申告だけやって終わり」
そんな声が当事務所にも多く寄せられます。
帳簿が整っていないと、相談したいと思っても、数字を元にした話がそもそもできません。
逆に、日々の処理に方針があり、会話が通じる環境であれば、
ひとり社長でも経営判断はグッとラクになります。
クラウド会計の本当の活かし方は、入力そのものより、
その後に誰と、どう数字を見るかにかかっています。
帳簿も申告も、ツールで効率よく進められる時代になりつつあります。
でも、「帳簿がちゃんと整っているか」「その数字で意思決定できるか」という部分は、
今も昔も、人と人との対話にしか生まれません。
今の税理士とのやり取りにモヤモヤされている方、
クラウド会計を入れてみたけど思ったよりスッキリしない方。
税理士変更も一つの選択肢かもしれません。
当事務所では、クラウド会計を前提とした運用と、
数字の意味を一緒に考える関係性を大切にしています。
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